1万時間の法則という言葉をご存知だろうか。
何事にも1万時間費やせばプロレベルに到達するという法則だ。
1万時間と言われてもあまりピンとこないかもしれないが、例えば1日8時間その事に集中して、それを週6日間やり続けた場合、約4年で1万時間に到達する。
そこまでこなして初めてプロレベルになれるのだそうだ。
確かにどんな分野でも1万時間やれば相当実力はつくと思う。
ただ、1万時間練習して上手くなったからといってプロとして通用するわけでは決してない。
資質ももちろんあるだろうが、その1万時間の中身がきわめて重要なのだ。
僕が初めてジャグリングショーの舞台に立つ前は、一日8時間くらい独りで練習をやっていた。
雨の日は橋の下で練習し、強風の時は飛んでいく道具を追いかけながら、ただ黙々と独りで練習していた。
多分アスリートに負けないくらいストイックに練習していたと思う。
練習の時以外もヴィデオなどを観て研究していた。
ビデオではなくヴィデオな所にプロ意識を感じる。
1万時間とまではいかないが、それに近いくらい練習をして、初めてジャグリングショーをやる機会に恵まれた。
結果は散々なものだった。
その日に引退を覚悟したほど、お客さんには何も伝わらなかったのである。
ショーが終わった後、少しでも癒されようと思って、路地裏を歩いて子猫を探していたことを今でも覚えている。
出来が悪いのは当然である。
僕が演じたのはジャグリングショーではなく、ただのジャグリングだったからだ。
いくら一人でひたすらジャグリングを練習して上手くなろうと、お客さんにはなにも伝わらないのだ。
壁に1万時間ボールを投げ続けてピッチャーになれるわけはないし、金融の勉強を1万時間しても投資の世界で勝てるわけでもない。
それと一緒である。
それから僕は、ショーとはどういうものかを考えるようにしながら、少しづつ練習の内容や環境を変えていき改善していくことができた。
どの分野にも言えることだと思うが、ただ闇雲に一万時間練習をすればいいというものでは無いようだ。
パフォーマンスという分野に限って言えば、1人で黙々と練習するのではなく、日々実践を交えながら改善点をフィードバックしていったほうが遥かに質の良い練習ができると思う。
今現在、僕の練習時間はおそらく2万時間を超えていると思うが、早く3万時間に到達したい。
女性にモテる気がするからだ。