隠密生活

最近は訳あって隠密生活をしている。

精神が病んで見えないものが見えるようになった訳ではなく、家庭の事情で隠密生活をしているのだ。

このような生活は正直嫌いではない。

15年ほど前にカナダのスラムに面した廃ホテルに住んでいた時、ネットの電波がなくて不自由だった。

唯一拾える向かいの建物から飛んでいるWi-Fiのパスワードを別館に住んでいた薬物中毒のヨーロッパ人に聞き、かすかに飛んでいる電波を窓際にへばりつきながらキャッチしていた。

速度は100Kもいかないくらいのウンコ電波で使えたもんじゃなかったんだけど、その電波が唯一の文明との架け橋だったので、その電波で何時間もかけて日本の動画をダウンロードして観ていたものだ。

どうしても電波が繋がらない時は、わざわざ近所のネトゲショップへ行ってUSBメモリに動画をダウンロードしに行っていた。

その時使っていたパソコンは、金に困った友達が20ドルで売ってくれたボロいパソコンだった。

当時バイトしていたレストランの賄いと、買ってきた安いビールを飲み食いしながら、廃ホテルで動画を観るのが朝から晩までバイトをしていた日の唯一の楽しみだった。

その当時に比べれば天国のような環境なんだけど、当時と変わらないと言えば変わらないのかもしれない。

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