週末が近づくにつれて練習の疲労が徐々に蓄積され、木曜あたりに一度ピークが来るので、そういう時は銭湯へ行って体力の回復をはかる。
去年の暮れあたりから昔行きつけだった銭湯にまた通い始めているのだが、お客さんは昔とほとんど変わっていない。
銭湯で知り合いになったおじさんも結構いて、会うと二言三言話す。
知り合いではないが、よく見かける変わった人には勝手にあだ名を付けている。
パンチパーマさん、ガチムチホモ太郎さん、キ◯タマの裏さん、チンピラジャンボカットなど、かなり最悪なあだ名が多いのだが、その中でも最近僕より若い感じの変わった子がいる。
その子はいつも風呂に入ると潜ってしまうので、僕は彼を「カッパ君」と呼んでいる。
こないだたまたま同じ浴槽に同時に入ったのだが、カッパ君は入るや否や、すぐに潜ってしまった。
…
小学校時代は僕もよく友達と銭湯で潜って遊んでいた。
もう潰れてしまったが、家から200mくらい上がったところに銭湯があって、そこによく行っていた。
そこにはいつも友達がいたのだが、夜に友達と会うと何か新鮮でテンションが上がったのを覚えている。
そこは浴槽が何個かあって、浴槽と浴槽の間は細いバイパスのようなもので繋がっていた。
友達はいつもスーパーボールを持ってきていて、そのバイパスに入れると反対側から飛び出してくるので、その様子を潜って見るのが面白かった。
彼は元気だろうか。
…
そんな思い出に耽っていたんだけど、ふとカッパ君がまだ潜ったままなことに気づいた。
潜ってから2分近く経っているのに一向に上がってこない。
あれ、マジで大丈夫かな?と、だんだん心配になってきたので声をかけようかと思ったとき、突然ヌッと上がってきてビクッとなった。
長時間潜っていたにもかかわらず、水中で呼吸していたかのように平然とした様子で上がってきて、そのまま脱衣所に向かっていった。
彼は本当にカッパなのかもしれない。