昨日のとある休憩所での出来事。
練習のオフ日だった僕は、整然と並べられた席の一番後ろに座り、スマホから流れる知的な動画を眺めて考え事をしていた。
昨今のコロナ問題、バイデン氏の政策方針、中小企業の経営不振。
「冬もそろそろか…」
僕は虚ろな目で遠くを眺め、静かに呟きながら憂いていた。
…ふと前にいた男性に目が止まった。
何か違和感を感じた。
僕は雪の中を掻き分けて歩くラッセル猫ちゃんの動画を止め、もう一度彼を見た。
彼はタブレットにイヤホンを挿して動画を観ているのだが、その内容に目を疑った。
彼はトイレの動画を観ているのだ。
後ろを人が通るたび、彼はキョロキョロと挙動不審そうに周りを見回している。
…ヤバイ
もしかしてあの映像は盗撮モノで、ここでは書けないような内容の動画が流れるかもしれない。
どうしよう。
僕は一人でドキドキしていた。
僕は息をひそめながら彼のタブレットから流れる動画に釘付けになった。
…しばらく見ていたが、その動画には一向に人は映らず、ずっと便器がアップで映されている。
しばらく水が流れる映像が映ったと思ったら、今度は彼のものであろう指が映り、トイレの横にあるボタンを押している。
便器からにゅーっとウォシュレットが出てきて、水がシャーっと出ている。
そんな映像を延々と観ているのだ。
…もしかしてトイレマニアの方だろうか。
「あの、すみません、トイレマニアの方ですか?」
と訊いてみようか、それとも、
「いやー、TOTOマジでリスペクトっすよね!」
とフランクに訊いてみようか。
そんなことを考えていたら、彼とバッチリ目が合ってしまった。
僕は思わず「きゃっ!」と声を出し、席を立ってしまった。
…もうちょっとくつろぎたかったのだが。
そうして僕の休日は静かに終わったのだった。
完
カームさん面白いですね(笑)
ふっちゃまさん
これがフィクションではなくノンフィクションだという事実がヤバイです笑