肝試し その2

18才になった僕と僕の友人たちは、夜な夜な集まって遊ぶのが日課となっていた。

その夏の時期は、なぜか週に1回は肝試しに行くのが習慣となっており、その日も小樽の心霊スポットである某廃病院へと車で向かった。

そこはかなり有名な場所で、市内はもちろん市外からも肝試しに来る人たちが後をたたなかった。

この日も札幌から来たという少しガラの悪そうな5人組の若者が来ていた。

しかし何やら建物の前でみんなモジモジしていた。

近寄ると、

「あの、入るんですか?よかったら一緒に入りませんか?」

と言われた。

たじろぐのも無理はない。

病院の外観からして恐ろしいのだ。

知識が無い状態で建物内に侵入するのは、歌舞伎町のぼったくりバーに入ってホステスに奢るくらい危険なのである。

「いいですよ」

と僕らは言い、彼ら5人と僕ら4人の計9人パーティーで建物内に侵入することとなった。

この廃病院の正面玄関は、分厚い板が固く打ち付けられていて入れない。

しかし建物横に回ると、人一人やっと入れるような割れた小さな小窓があり、そこから無理やり侵入できるのだ。

近くには民家があり、あまり騒ぐと地主と思われるおじさんに物凄い剣幕で怒られるため、僕らは息をひそめながら窓によじ登り、病院内に一人づつ入った。

いつも思うのだが、この建物の中と外では明らかに温度が違う。

建物内の気温が異常に低いのだ。

僕らは息を呑んだ。

そこで僕らは一つ約束事をかわした。

何があっても大声を出さないこと。

一人が大声を出すとパニックになってしまうからだ。

「誰が最初に行く?」

という問いかけに、

「俺一番前歩きますよ」

と、札幌組の若い子が言った。

なんと勇敢なのだろう。

僕は2番手を歩くことにした。

後ろを歩くのが怖いからだ。

窓から侵入すると、左手側が長いスロープになっていた。

車椅子で2階へ行けるような構造なのだろう。

途中、階段の踊り場のような場所があり、そこから折り返してまた長いスロープを上るといった感じだ。

ちょっと分かりづらいが、下のイメージ図の階段が緩いスロープになっているものを想像してもらいたい。

ちょうどスロープを上り始める場所に立つと、スロープを上りきった場所が見える構造になっていた。

全員がスロープを上り終わり2階につき、懐中電灯で長い廊下を照らすと、恐怖感が一段と増した。

天井が腐り落ちて、よくわからない布がブラブラと垂れ下がり、足元にはゴミが散乱している。

最初の個室に入ると、壁に古いカレンダーが掛けられていた。

確か1980年代のカレンダーだったと思う。

その時期にこの病院は閉鎖されたのだろうか。

廊下の両側には個室が並んでおり、そこを抜けると詰所のような場所に出た。

長いテーブルには書類が散乱しており、端には黒電話が置いてあった。

今この電話が突然鳴ったとしたら、僕はウンコを漏らす自信があった。

その先に進むと、天井から見たことのあるライトがぶら下がっている個室に着いた。

手術室だ。

懐中電灯で照らされた手術室は非常に恐ろしく、緊張が走った。

その時、誰かが

「うわーーー!!!」

と叫んだ。

その叫び声にみんな驚き、無言で一斉に来た道へと逃げ出した。

その時僕は後悔していた。

前から2番目を歩いていた僕は、逃げるときは後ろから2番目になっていたのだ。

ゾンビ映画だったら襲われてもおかしくない位置だ。

集団は半ばパニック状態になっており、前にいる7人も僕と同様に全速力で逃げていた。

廊下を抜け、目の前には1階へと続くスロープが見えてきた。

みんな一斉に降りていき、僕と僕の後ろにいた若い子も一緒にスロープを降りた。

1階に差し掛かる時に、ふとスロープの上を見た。

なぜかたくさんの人の形をした影がスロープから降りてきている。

僕の後ろには若い子が1人いるだけのはずだ。

僕は訳がわからなくなりながら、小窓を出て外に脱出した。

外にはもうみんながいて、

「マジこえー!!!」

とか言いながら固まっていた。

そして一番後ろの子も窓から出てきた。

…最後のスロープから降りてきたたくさんの人影は何だったんだろう?

もしかしたら見間違いだったのかもしれない。

きっとそうだ。

みんなには言わないでおこう。

と思っていた。

その時、最後に建物から脱出した子が僕のそばに来て、

「あのー、すいません」

と声をかけてきた。

「見ました?後ろからたくさん人来てませんでしたか?」

と言われ、ゾッとした。

「見た見た!絶対後ろから人来てたよね!」

と僕も興奮しながら伝え、気づいたらお互い手を取り合りながら話していた。

その後はみんな足早に車に乗り込み、解散することとなった。

僕はあまり心霊的なことは信じない方なのだが、これは数少ない心霊っぽい体験の一つである。

というかこんなことを書いてる今でも怖い。

今日は一人でトイレに行けないので、オムツを履いて寝よう。

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