気づかないフリ

キッズマジックの王道のテクニックとして、「Look,Don’t See」というものがある。

これはキッズマジシャンのデビッド・ケイ氏の著書でも書かれており、簡単に言うと、マジシャンが気付かないところで何かが起きているんだけど、子供たちだけ気づいているというものだ。

当然マジシャンも意図してやってるんだけど、それにあえて気づかないフリをして演じるのだ。

このテクニックは僕もキッズショーの中で何度も演じるのだが、まず間違いなくウケる。

例えばボールを握って、

「今からこのボールを消します」

と言って、魔法の杖を取り出すときに(ワザと)地面にボールを落として、何もない手に魔法をかけようとする。

すると子どもたちが数人、

「地面に落ちたよ~」

というけど、あえてそれを無視して空の手に魔法をかけて、ボールが消えたと言い張るのだ。

そしてもう一回同じことを繰り返すと、今度は子どもが全員、

「落とした~!」

という。

更に繰り返すと、更に子どもたちは大声で叫び出す。

これが「Look,Don’t See」であり、冒頭の掴みとしても最高だと思う。

これは昔、「8時だヨ!全員集合」という番組のコントネタで、志村けんが後ろにおばけなどが出てきても気づかず、観客の子供たちが、

「志村~!うしろ、うしろ~!」

と叫んでいるネタに非常に近く、志村けんの鉄板ネタとしても有名である。

このテクニックは実はなかなか難しく、いかにワザとらしくなく振る舞うかという演技力が問われる。

僕は昔、ずっとズボンのファスナーをワザと下ろしてショーをやってツッコミを待っていたんだけど、全く触れられなかったことがある。

後日観客の人から聞いたんだけど、ガチでチャックを閉め忘れてると思って、あえて気を遣って敢えて言わなかったそうだ。

ある意味観客の方が「Look,Don’t See」なチン事、いや、珍事だった。

考えてみれば当たり前の話なのだが、そんな黒歴史も今では良い思い出である。

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