戦慄

昨日の夜銭湯に行った。
僕の行きつけの銭湯のお客さんはかなり個性派だ。
そして個性派の人たちにはそれぞれ、チンピラジャンボカットさん、滑舌悪男さん、タマキンさんなど、聞くに耐えないあだ名がある。
その中でも僕が恐れている人がいる。
ガチ出ホモ太郎さんだ。
ホモ太郎さんと出会ったのは今から8年ほど前だろうか。
色白で毛深く小太りのホモ太郎さんは、脱衣所で着替えていると、いつもニコニコしながら僕を見ていた。
最初は気のせいだと思っていたが、やはり僕のことを見ている。
時計を見る振りをしながらホモ太郎さんを見ると、満面の笑みで僕を見つめていて、思わず可笑しくなって顔を覆って笑ってしまった。
そしてある日、僕のそばまで来て突然
「音楽やってるね。君、音楽やってるんだね。」
と聞かれて、意味がわからなすぎて顔を覆って笑った。
そして昨日、いつもと変わらずホモ太郎さんが脱衣所で着替えていた。
しかし前のように僕の方を見てニコニコせずに、僕に背を向ける形で立っていた。
きっと趣味が変わったのだろう。
もしくは長い月日が経って僕のことを忘れてしまったのだろう。
そんなことを思いながら、何気なく鏡を見て戦慄した。
ホモ太郎さんは鏡ごしに僕を凝視しながらニコニコ笑っていたのだ。
それを見て僕は顔を覆い、笑ってしまうのだった。
この銭湯は時間が止まっていて最高の場所だ。

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