キッズマジックショーを演じる上で、僕は「中間部分」を重視している。
例えばスポンジボールを使ったマジックを演じるとしよう。
便宜的に簡単な手順の一例として、
・子供を一人ステージに呼んで自分の横に立ってもらう
・自分の手の中にスポンジボールを入れる。
・その手を叩いてもらう。
・スポンジボールが2個に増える。
というマジックがあったとする。
この手順をどう演じるかでプロとアマの大きな差が出てしまうのだ。
「はい、じゃあ一人僕の横に来てください。スポンジのボールを手に握るので叩いてください。なんと、スポンジのボールが2個に増えました。はい、ありがとうございました~。みんな拍手~。」
これが15秒で終わるアマチュアのうんこ演技である。
文字通り教科書通りの手順を淡々と演じるだけのものだ。
大げさに見えるかもしれないが、こういう演技をする人は意外と多く、面白くも何ともない。
柴犬がうんこをしているところを見ていた方が、遥かにエキサイティングな時間を過ごせる。
これが次の演技だとどうだろう。
・子供を一人ステージに呼んで自分の横に立ってもらう。
・名前と年齢、好きな子を聞く。
・「僕は寺田心です」と自己紹介する。
・自分の手の中にスポンジボールを入れるフリをして、わざと地面にスポンジボールを落とす。
・子供に指摘されるが、無視してマジックをしようとする。
・手にスポンジボールがないことに気づいて慌てて自分のタマを握る。
・改めてスポンジボールを握り、手を叩いてもらう。
・「痛っ!」と叫んで転げる。
・また叩いてもらう。
・「痛っ!」と叫んで転げる。
・また叩いてもらう。
・「痛っ!」と叫んで転げる。
・優しく叩いてもらう。
・そーっと手を開けると、手の中から2個のボールが出てきて自分も驚く。
・手伝ってくれた子供へ、みんなから拍手をしてもらう。
最初に紹介した淡々としたものと比べてどうだろうか。
自己紹介は滑るし、自分のタマを握ると2度と呼ばれなくなる恐れがあるが、遥かに子供にウケるだろう。
途中同じことを繰り返すのは、子供は繰り返す度にどんどんとウケるからだ。
手の中のスポンジボールが増えるという単純なマジックだけでも、中間部分を付け加えるだけで全く違うマジックに変貌するのだ。
スタートとゴールの間でいかに子供たちと一緒に楽しめるかが肝要なのである。