公園でジャグリングの練習をしている時、よくワンちゃんの散歩をしているおばちゃんと話すことがある。
ラブちゃんという名前で(もちろんワンちゃんの名前)、ちょっとぽっちゃりした13歳の白い柴犬である。
彼女はほとんど飼い主以外の人に懐くことはないそうで、僕からも一定の距離をとって横目で僕を見ている
「ラブちゃーん!」と言いながら近づいても、そそくさと逃げていき、魔界村のレッドアリーマーのように測ったような一定の距離を保つ。
僕はいつかモフモフしたいと目論んでいるんだけど、1m以内に近づけたことが一度もない。
そんな日々が5年ほど続いていたんだけど、先日おばちゃんと珍しく長話をしていた。
ラブちゃんは相変わらずメジャーで測ったような距離を僕からとっていたんだけど、いつものことなので気にもとめていなかった。
10分ほど話した時だろうか、ふと左手に冷たい感触があった。
驚いて手の方を見ると、なんとあれだけ近づいてくれなかったラブちゃんが僕の左手に鼻を近づけてすんすん嗅いでいるではないか!
「ラブちゃーん!近づいてくれたの!?」
と小梅太夫のような裏声で言うと、またそそくさと一定の距離まで離れてしまった。
一瞬だけど、5年越しの恋が実ったような気分になった。
次に近づいてくれるのは何年後になるだろうか。