危ない香りが漂うベニスビーチで意を決してジャグリングをした。
するとすぐに目がギンギンの男性が来て、
「パッシングやろうぜ!パッシング!」
と言われた。
パッシングは複数人数でクラブなどを投げ合うことで、チームプレーが苦手な僕はパッシングが好きではない。
例え2人一組で練習を始めても、1分で飽きてお弁当を食べてしまう。
「ごめん、俺パッシングできないんだ」
とやんわり断っても
「じゃあ俺から投げるね!」
という感じで会話が成立しない。
しょうがないので少し付き合うことにした。
「もっと回転を緩めて投げろ!」とか、「手元にめがけて投げろ!」とか結構長い間注文されたので、いい加減飽きてきたので手を止めてチンコにぶつぶつ話しかけていたら帰っていった。
よし、これでショーができると思って再開したら、今度はチャリに乗った板前カットが現れた。
「おい、お前男は好きか?」
最悪だ。ホモだ。
どういえばいいのかわからなくて、
「いや、僕はノーマルだよ」
とやんわり断ったら、
「お前何言ってるんだ?」
と訝しがられた。
どうやら僕のほうが聞き間違えたようだ。
話を聞くと、どうやらこの土地でのショーのやり方を親切に教えてくれているようだ。
「ここにこうしてコップを置かないとチップはもらえないぞ!」
といった感じの助言をされたが、僕はチップより海外でジャグリングをやっている画像がほしいのでコップは置かないんだとやんわり言ったら、
「ダメダメ!ここにコップを置かないと」と言われた。
ここの人達は人の話を聞かないのだろうか。
とにかくそのままジャグリングをしたが、人の足が止まることはほとんどなかった。
そうこうしているうちに日は西に傾き始めた。
だんだん店のシャッターも閉まりはじめた頃、向かいの危ないマッサージ屋の中国人の店主が近づいてきた。
店の近くで勝手にジャグリングをやっているから怒られるかな、と思っていきなり謝ったら、
「ぜーんぜんここでやていいよ!オニーサンのショーベリーグッドね!コップを置くとお金をもらえてチンチンもおっきおっきよ!」
と言われて少し安心した。
しかしそれ以降も人の足はほとんど止まることがなく、暗くなって道具が見えなくなった頃、膝がガクッと折れて僕のベニスショーは終了した。
ベニスの洗礼だ。
帰っておかあさんといっしょを観ながら寝ようと思った。
でも夕日がきれいですぐに元気になった。
明日はいいことがあるさ。