かなり前に僕は札幌のジャグリングクラブへよく行っていたんだけど、いつも初心者の人たちを集めてやたらマニアックな技を教えていた人がいた。
彼はショーンマッキニーというジャグラーを崇拝し、彼の技を熱心にジャグリング初心者の人たちに教えていたのだ。
当然初心者の人にそんな難しい技ができるはずもなくポカーンとしていたんだけど、彼は構わず淡々と技の説明をしていた。
最近知ったことだけど、ショーンのスタイルは革新的で、当時のジャグラーたちはこぞってショーンのスタイルをマネしていたのだそうだ。
ショーンのステージ衣装はTシャツにジーンズというラフなことが多く、それに影響を受けて同じ格好をしてジャグリングをする人も多かったそうだ。
そしてその人はそのど真ん中の時代にジャグリングを始めたそうだ。
戦争の話を何度も繰り返すおじいちゃんのように、ショーンの技をひたすら初心者に教えているので、あれ、この人ちょっとアレなのかな?とずっと思っていたんだけど、今になるとその人の気持ちがなんとなくわかる。
僕も昔からスケボーをやっているんだけど、若いスケーターと話す時、当時のスケートシーンの無茶苦茶なエピソードを長々と話してしまうことがあり、ふと我に返って「ああ、こういうことなんだな」と思うのだ。
やはり若い頃に自分が置かれていたシーンというのは何者にも代え難く強烈で、その最高の時代を押し付けてしまう節が誰にでもあるのはしょうがないことなのかもしれない。
スケボー、ジャグリングに限らず何であれ。
そりゃあ全盛期に出会ったものが最高なんて誰でも思うことなんだろうけど、時代は足早に移ろいゆくものである。
全盛期の自分にとって最高だったものが、今を生きる子たちにとってはピンとこない遺物なのかもしれない、ということを常々頭の片隅に入れておいた方がいいような気もする。
ただ例外的に本物のレジェンドが残した上澄みだけは時代を超えて心に響くのも確かである。
ジャグリングクラブの人がいつも推していたショーンのジャグリングの映像は今観ても胸が熱くなるし、今を活躍するパフォーマーが観ても同じ感情が湧くんじゃないかと思う。
そしてその人はレジェンドが遺した技を少しでもみんなに伝えてその気持ちを共有したかったんだと思う。
ほんのちょっとアレだったのも確かだけど 笑
およそ20年前、29歳の若さで亡くなったショーンマッキニーの映像は貴重だ。