クールなマジシャン、イケてないマジシャン

マジシャンが仕事以外でマジックを披露する場というのは限られている。

どういう時に機会があるか考えてみた時、最初に思い付くのは飲み会の席などだろう。

例えば友人に合コンに誘われ、居酒屋へ行ったと想定する。

自己紹介の時に「職業はマジシャンです」なんていうと、まず間違いなく、

「えーすごい!なんか見たい!」

という流れになるだろう。

ここでクールなマジシャンと、イケてないマジシャンの差が出てしまう。

クールなマジシャンは恐らく何も持っていない。

仮に持っているとしたら、居酒屋へ来る前の仕事で使い、たまたま持ちあわせていたトランプ1組などだろうか。

本物のカードマジシャンがカードを持つと無敵になってしまうのだが、本当に何も持っていなかったとしたら、その場にあるものを使って即興で演じるだろう。

例えばコップの底からビール瓶の王冠を入れてしまったり、ティッシュペーパーを丸めて握ってもらい、魔法をかけると増えてしまうといった感じだろうか。

ここで注目してもらいたいのは、コップを女性に持ってもらう時や、ティッシュペーパーを握ってもらう時に、このマジシャンはいつの間にか女性の手に触れているのだ。

実に抜け目がない。

ではイケてないマジシャンはどうだろうか。

「はい?マジックですか?いやはや、今日はマジックをする予定など無かったのですがね、仕方ない、何か演じましょうかね。はてさて」

と言い、マジック道具がびっしり入ったアタッシュケースを颯爽と取り出すのだ。

いやいや、やる気満々じゃねーか!

てか何だよ!そのアタッシュケース!

健康食品の営業マンかよ!

アミノ酸の実演販売でも始める気かよ!

「ちょっと音無しでは寂しいので、吾輩のiPhoneからBGMを流して、と」

おいおい、手際良すぎだろ!

てか何でノータイムでBGMが流れるんだよ!

あらかじめセットしてただろ!

しかも何でBGMと演技がピッタリ合ってんだよ!

めちゃくちゃ練習してきただろ!

「はい、ごく普通の2本のロープを振ると、2本のロープが結ばれてしまいました。僕も今宵どなたかと結ばれたいのですがね。おっと、失敬」

といった感じである。

そして悲しいことに、このイケてないマジシャンは、実際に僕が遭遇したマジシャンなのである。

かなり誇張が入ってるが。

皆様も飲み会の席などでマジックを演じる機会がある場合は、是非クールに演じてもらいたい。

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